マロオケ、悲願の東京初公演!

奥田佳道×篠崎史紀

2016年5月5日(木・祝)、ついにマロオケが東京初公演!今まで九州でしか観ることができなかったマロオケが、
サントリーホールで、モーツァルトの6大交響曲というド級のプログラムでわたしたちの前に現れます!
音楽評論家・奥田佳道、そしてN響コンサートマスター・篠崎史紀、旧知の仲であるおふたりにマロオケを語っていただきました!
全四回でお楽しみください!

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マロオケをどう聴く!?

結月 モーツァルトの曲の話はありますか?

奥田 それはマロだね。

マロ いやぁ、今回はモーツァルトの名曲中の名曲だから、もうたくさん語ることがないのよね。これ、語っちゃうとモーツァルトの価値が下がる気がする。

奥田 でも、マロにとってモーツァルトって何? 一言で言える?

マロ 宇宙人。

奥田 宇宙人!?

マロ ウィーンでいろいろ勉強した上で、天才ってシューベルトなのよ。

奥田 ウィーンの天才はシューベルト…?

マロ うん。あとメンデルスゾーン。このふたりは、すごい天才で、作曲家の中でも本当に大事にすべきなんだけど、モーツァルトって宇宙人だと思わない?

結月 そうですよね。あれは人間の音じゃないですよね。

マロ もう人間離れしてんのよね。彼が書いたものは書き直しがないとか、まあたまにはあるんだけど、でも非常にきれいだし、音符をひとつひとつ考えるんじゃなくて、景色のように見えたのをただ写しただけっていうし、楽譜屋が彼の楽譜を全部書き写そうとしても生涯かけても書き終えないって言ったくらい曲数もあるし、死んだあとは遺体がないし、月に帰ったのかなとかね、かぐや姫伝説って、もしかしたらモーツァルトから生まれたのかなとか、それくらいモーツァルトって異次元な感じがするよね。

結月 それはよくわかります。

篠崎 マロ で、ぼくたち、モーツァルトを勉強するときってものすごくよく考えるわけ。考えるんだけど、なんで考えるのかを考えたとき、モーツァルトの曲を弾くときに、サラッと弾くにはモーツァルトと同じくらい天才じゃないと無理なんだとわかる。それができないから、みんな考えるんだと思う。それでいろんな弾き方を考えて、しかもその弾き方だけど、どんな弾き方をしてもモーツァルトってうまくいっちゃうのよ。他の作曲家だとなかなかそうはいかないんだよね。だからモーツァルトのすごさっていうのは、時空を超えちゃってるんだよね。例えば、今のポップ調にアレンジしても全然変じゃないし、ジャズにしても変じゃない。そんな作曲家って他にいないんだよね。で、モーツァルトの曲の何がすごいんですかって訊かれても、全部すごいから何も言えないでしょっていうのがモーツァルトなんだよね。

奥田 今回は6曲ですけど、25番のあのシンコペーションからジュピターの最後のフーガまで、わたしたちはジェットコースターに乗っているというか、宇宙旅行をするような、見たこともない星を見たり、そういうのがこのコンサート当日の風景じゃないですかね。

マロ そうそう。今、風景って言ったけど、聴いてそのまま何かを感じ取ってもらえればいいよね。別に勉強してきてくれる必要もないしね。

奥田 誤解を恐れずに言うと、このコンサート、「聴く」コンサートじゃないんですよ。「感じる」コンサート。匂い、耳、目もそうだし、何かお行儀よく聴いて、拍手をして盛り上げましょうじゃなくて、体中の細胞が音の粒子を受け止めたら、この日のコンサートが終わったら若返っちゃったみたいなね。聴くっていう概念を超えた、モーツァルトの息吹とか、宇宙人とか、何でもいいんですけど、「感じる」コンサートてあってほしいし、それができる顔ぶれだし、それが聞こえる曲だしってことですよね。

結月 皮膚で聴くってことですよね。

奥田 そうそう!皮膚!

結月 毛穴で吸収するみたいな!

奥田 とにかくこの日の音の粒子、宇宙から来た音みたいなものをね、みんなで体験して、そのためのリハーサルをしてね。それでマロオケのおもしろいところは、本番中にね、この奏者たちはね、醸成というか…

マロ 熟成していくんだよね。

奥田 本番中に温度が上がってくるんですよ。リハーサルももちろん和気あいあいって感じだけじゃなく、こんな可能性はどう? あのやり方どう?って、はみ出たところが出て来るんですけど、本番は本番で、みんなで行きたい目標があって、みんながどんどんアイデアを出し合って来て、とにかく本番中の舞台の景色がとてもいいです。

マロ あとたくさんしゃべんないね、みんな。いろんなことをやるんだけど、たくさんしゃべってリハーサルをやるんじゃなくて、その場で起きたことを瞬時に反応しながらやっていく。あの感覚、不思議だよね。

奥田 音楽を通じて会話をしつつリハーサルも進むので、コンサート本番のお客さんの楽しみとしては、舞台で起こっているアイコンタクトの嵐でしょうね。これはステージに近いひとたちだけじゃなくて、遠くのひとたちもですけど、単なるアンサンブルの縦の線を合わせるだとか、きちっとそろえるとかじゃなくて、いい音楽をするためにみんなが舞台の上で会話を、目で会話をし、耳で会話をし、っていうのが今回のマロオケの最大の醍醐味だと思う。

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