マロオケ、悲願の東京初公演!

奥田佳道×篠崎史紀

2016年5月5日(木・祝)、ついにマロオケが東京初公演!今まで九州でしか観ることができなかったマロオケが、
サントリーホールで、モーツァルトの6大交響曲というド級のプログラムでわたしたちの前に現れます!
音楽評論家・奥田佳道、そしてN響コンサートマスター・篠崎史紀、旧知の仲であるおふたりにマロオケを語っていただきました!
全四回でお楽しみください!

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マロオケは男子校!?

結月 あと、マロさんはマロオケは男子校だって言っていて、マロオケは男だけっていうのは大きな特徴ですよね。

篠崎史紀 マロ そうそう。男だけなんだよね。もともとマロ、男子校出身なのよ。それで、女性ってバランス感覚に優れていて、ものすごく先見の明もあって、とてもいいんだけど、極端な 言い方をしちゃうと、例えばね、クラスで先生が授業をやっているでしょ。そうすると先生が職員室から電話ですって言われると、先生が「お前ら、自習しとけよ」って言って電話 のところへ行っちゃうよね。するとクラスの中で騒ぎだすのって大体、男子なんだよね。いろんなことをみんながやり出して、「おいおい、やれよ、やれよ」って騒ぐでしょ。でも そこで出て来るのが女の学級委員長で、「先生が静かにしなさいって言ったじゃない!」ってバランスを取ろうとすんのよ。でもこのオケのおもしろさはバランスを取ってないわけ じゃないけど、クラスの男子みたいなものなんだよ。そのノリなんだよね。

結月 確かにそういう女の学級委員長はいそうです。

マロ 日本って、音楽の先生がいて、先生が号令をかけてひとつの方向へ向かわせて、で、何て言うかな、ひとつの方向へ強制するっていうの? 言い方ひどいけど、去勢をするっていうか、そういう感じなわけよ。だから、みんな先生に対して服従するしね。でもそれって縮小していくんだよね。きれいにはなる。ものすごくきれいにはなるんだけど、はみ出たものは切るんだよね。それで中に収めようとする。でも、このマロオケは逆で、飛び出たらそこに枠を合わせる。

奥田 うまいひとたちを集めて、みんなでエイヤってやったオーケストラは世界にあるかもしれないんですけど、マロオケは出来栄えもそうですし、そこに至るプロセスもちょっと違うんですよね。今、マロが言ったことは大切で、つまり音楽へいろいろな考えが練習中に湧き出て来るわけです。このやり方どうとか、これはやりすぎとか。また、さっきのどうだったとか、みんなでそうやっていくと、いろいろと手足が出てきますよね。すると音楽の枠がどんどん大きくなっていって、それをコンサートのライヴに頂点に持っていく。だから、リハーサルもおもしろいですし。

マロ そう。枠が大きくなっていくんだよ。

奥田 日本語でよく寄せ集めとか、フェスティバル的なオケとか、あと、よくある音楽祭とかで名手が集った一期一会のアンサンブルとかあって、どれも素晴らしいけれど、マロオケはそれらの良さとは違うんです。目的も出来栄えも違う。独特の男の世界みたいなものだよね。

マロ 潜在能力200%だね。

奥田 名曲が演奏されるのも音楽ファンには喜びなんですけど、マロオケっていうのは、さっきも言いましたけれど、指揮者がいないスーパーオーケストラっていうことを言われたくてやっているわけでないんですよね。つまり、お客さんがこの日、サントリーホールでどういう思いで聴いてくれるかっていう、無言の気みたいな…

結月 そういうの、ありますよね。

奥田 マロオケのひとたちは、それを本番に捉えてお客さんにフィードバックするんです。

マロ ホントは一番おもしろいのは、自分たちなんだよね。

奥田 なので、スタッフもわたしたち裏方も演奏家も、リハーサルから一週間とか一緒に過ごしていてもストレスがないんですよ。どうしてかっていうと、みんなで楽しいことをやるために一生懸命になるから。

結月 ところでマロオケは指揮者なしだから、今までの演奏は時代的にはベートーヴェンまでですか?

マロ そうだね。モーツァルト、ベートーヴェン。

奥田 ウィーンのアンサンブルの楽しみ方だとか、今は変わってしまいましたが古きよき時代の、マロもいた頃の、ちょうどベルリンの壁が壊れる前まで、政治的には東西に分かれていた時期とか、ウィーンが永世中立国の首都だったとか、そういう時代。指揮者で言えば、カラヤンとかバーンスタイン、それにクライバー。

マロ ベーム。

奥田 そう、カール・ベームとかが生きていた時代のウィーンには、そういった大指揮者とか、壮絶なオーケストラとか、ひれ伏したくなるようなオペラの魅力がある一方で、究極のアンサンブルっていうものがウィーンにはあった。ウィーン・フィルなんか今でも巨大な室内楽をやってる。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、それからメンデルスゾーンの「イタリア」もやってますけど、そのあたりまでがマロオケの十八番なんですよ。

マロ プロコフィエフもやったりするけどね。古典交響曲とかね。あれもハイドンの模倣だから。

奥田 ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンっていう古典派の音楽はこのひとたちにお任せあれ、という感じですね。

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